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【NST薬剤師解説】静脈栄養とは?中心静脈と末梢静脈の違い、浸透圧比を比較

keiko
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  • この薬って末梢静脈?中心静脈?どちらから投与するもの?
  • 末梢静脈栄養と中心静脈栄養の違いは?

中心静脈と末梢静脈を間違えると、血管へのダメージ(血管炎や静脈炎)につながります。

私は病院薬剤師歴8年、2024年にNST専門療法士を取得したkeikoです。NSTの現場で静脈栄養に毎日向き合ってきた経験をもとに、実務で使える情報をお伝えします。

この記事では、末梢静脈栄養と中心静脈栄養の違いと、代表的な製剤がどちらに該当するかを解説します。

ご自身の病院で使われている点滴が末梢静脈で使用されるのか、中心静脈で使われるのかがわかるようになります。

静脈栄養の基礎から代表的な製剤の使い分けまで、実務ですぐ使える内容を凝縮しています。ぜひ最後まで読んでみてください。

静脈栄養には2種類ある〜浸透圧が投与する血管を決める〜

静脈栄養には、投与する血管の場所によって2種類あります。

  • 末梢静脈栄養(PPN:Peripheral Parenteral Nutrition)」
  • 中心静脈栄養(TPN:Total Parenteral Nutrition)

どちらを使うかを決める重要な指標が浸透圧比です。

血液の浸透圧に対するその輸液の浸透圧の比率を「浸透圧比」といいます。
浸透圧比が「1」に近いと血管への負担が小さく、1から離れる血管への負担が大きく、血管炎や静脈炎を起こしやすいです。

つまり、血液と同じくらいの輸液は末梢から投与できますが、
濃度が濃い輸液は末梢からは投与ができません!

末梢静脈栄養(PPN)=浸透圧比3以下・短期向け

末梢静脈栄養(PPN)とは、腕や手の甲などの末梢静脈(体の表面近くにある細い血管)から栄養を投与する方法です。

他の抗生剤など一般的な点滴の投与は末梢静脈からの投与が多いですね。

基本はコレ

  • 浸透圧比3以下の製剤を使用する
  • 投与可能カロリーは最大約1,000kcal/日
  • 投与期間の目安は1〜2週間以内

末梢静脈は血管が細いため、浸透圧比が3以下の製剤しか使用できません

浸透圧比が3以下の輸液、すなわち濃度が薄い輸液のため、
カロリーの割に水分量が多くなります。

点滴から水分をいくらでも投与して良い、ということはありえないため(心不全や浮腫などのリスク)
投与できるカロリーは最大でも1,000kcal/日程度と限られています。

この投与カロリーは1日に必要なエネルギー量を満たさない場合が多いので、
短期間(1〜2週間以内)の栄養補給に適しています。

例えば、【1日水分2Lまで】としたとき
末梢静脈栄養の代表であるビーフリードで考えると840kcalしか投与できません

浸透圧比3と末梢からの投与できる浸透圧比の上限であるのに、これだけしか投与できないんです。

中心静脈栄養(TPN)=高カロリー・長期栄養管理に使う

中心静脈栄養(TPN)とは、中心静脈すなわち心臓に近い太い血管から栄養を投与する方法です。

基本はコレ

  • 浸透圧比の制限なし
  • 1,500〜2,500kcal/日の高カロリー投与が可能
  • 長期栄養管理や消化管が使えない患者さんに適している
  • 中心静脈カテーテルを留置する必要があり、感染リスクがある

なんで中心静脈からの投与は浸透圧比を気にしなくて良いのか。

理由はこれ。
中心静脈は血流量が多く、流速が早いため高濃度の輸液を投与しても血液で速やかに希釈されるから。

血管を傷つける前に薄まるからOKということです。

そのため、浸透圧が高い製剤でも1,500〜2,500kcal/日の高カロリー輸液を投与できます。

消化管が使えない患者さんの長期間の栄養管理が必要な場合に適しています。

中心静脈カテーテル

よく臨床現場で聞かれる「CV入ってるか?」

言い換えると、
「この患者さんには中心静脈ルートが確保されているか?」です。

先ほども説明した通り中心静脈は心臓に近い血管で、上大静脈のことです。
ここに直接針を刺すことはできないので、鎖骨下静脈など他の静脈からカテーテルを入れて、上大静脈にカテーテルの先端を持ってきます。

穿刺する主な部位にはこちら。
・鎖骨下静脈
・内頸静脈
・大腿静脈

部位によって合併症が異なってきます。

中心静脈ルートには大きく3種類あり、
・中心静脈カテーテル(CVC;Central Venous Catheter)
・CVポート
・PICC
があります。

いずれも、カテーテルの先端は上大静脈に留置されていますが、今回はこんな言葉があるよ、程度でおさえておきます。

PPNとTPNの違い 表で確認

項目PPN(末梢静脈栄養)TPN(中心静脈栄養)
投与する血管末梢静脈(腕など)中心静脈(上大静脈など)
浸透圧比の目安3以下制限なし
投与可能カロリー〜1,000kcal/日程度1,500〜2,500kcal/日
投与期間の目安1〜2週間以内2週間以上

処方箋で確認!これは末梢静脈?中心静脈?

では実際に処方箋で考えてみましょう。次の製剤は、中心静脈と末梢静脈のどちらから投与するでしょうか?

クイズ① ビーフリード

【問題】
ビーフリード輸液は、中心静脈・末梢静脈どちらから投与しますか?

【答え】末梢静脈(PPN)

【解説】
ビーフリード輸液は、アミノ酸・糖質・電解質・ビタミンB1を含む輸液製剤です。
浸透圧比は約3で、末梢静脈栄養(PPN)で使用できる製剤です。

クイズ② エルネオパ

【問題】
エルネオパNF輸液は、中心静脈・末梢静脈どちらから投与しますか?

【答え】中心静脈(TPN)

【解説】
エルネオパNFは高カロリー輸液製剤で、アミノ酸・糖質・電解質・ビタミン・微量元素をすべて含む栄養製剤です。

エルネオパNFには1号・2号があり濃度が異なりますが、いずれも中心静脈栄養(TPN)専用の製剤です。

クイズ③ 10%・20%・50%糖液

【問題】
10%ブドウ糖液・20%ブドウ糖液・50%ブドウ糖液は、それぞれ中心静脈・末梢静脈どちらから投与しますか?

ブドウ糖液は濃度が変わると浸透圧比も変わります。それぞれ考えてみましょう。

【答え】

  • 10%ブドウ糖液 → 末梢静脈(PPN)可
  • 20%ブドウ糖液 → 中心静脈(TPN)
  • 50%ブドウ糖液 → 中心静脈(TPN)
ブドウ糖液の濃度浸透圧比(目安)投与経路
5%ブドウ糖液約1末梢可
10%ブドウ糖液約2末梢可
20%ブドウ糖液約4〜5中心静脈
50%ブドウ糖液約14〜15中心静脈

【解説】
ポイントは浸透圧比の違いです。

10%ブドウ糖液の浸透圧比は約2で、3以下のため末梢静脈への投与が可能です。

20%ブドウ糖液の浸透圧比は約4〜5で、3を超えるため中心静脈から投与します。

50%ブドウ糖液の浸透圧比は約14〜15と非常に高く、末梢静脈への投与は血管炎・静脈炎のリスクが高いため、必ず中心静脈から投与します。

「ブドウ糖液だから末梢でもいけるかも」と思いがちですが、濃度によって使用できる血管が変わることを覚えておきましょう。

※ちなみに、ブドウ糖50%は低血糖時にも使われることがあります
低血糖時は少量20mL程度で、生命の危機のためわざわざCVカテーテル留置する必要のある中心静脈からの投与はせず末梢から投与します

クイズ④ アミパレン

【問題】
アミパレン輸液は、中心静脈・末梢静脈どちらから投与しますか?

【答え】どちらでも使用可能(ただし処方状況による)

【解説】
アミパレンはアミノ酸輸液製剤で、末梢静脈栄養(PPN)でも使用できます。ただし実際の臨床現場では、50%ブドウ糖液などと組み合わせて中心静脈栄養(TPN)で処方されることが多い製剤です。

お決まり処方だから、と判断せず、処方箋全体(組み合わせている輸液も含めて)を見て投与経路を確認する習慣をつけましょう。

自分の病院の採用製剤を確認してみよう

静脈栄養製剤は病院ごとに採用が異なります。以下に代表的な製剤を一覧にまとめました。自施設の医薬品集と照らし合わせて、どの製剤がどの血管で使われているか確認してみましょう。

静脈栄養製剤一覧(糖・アミノ酸・脂質・ビタミン・微量元素の有無)

製剤名分類浸透圧比(目安)アミノ酸脂質ビタミン微量元素
ビーフリードPPN約3×○(B1のみ)×
エネフリードPPN約3○(水溶性のみ)×
アミノトリパ1号PPN約2×××
パレセーフPPN約2×××
ツインパルPPN約3×××
エルネオパNF1号・2号TPN約8〜9×
フルカリック1号・2号・3号TPN約8〜11×
ネオパレン1号・2号TPN約7〜9××
ピーエヌツイン1号・2号・3号TPN約4〜7×××
ハイカリックNC-L・N・HTPN約5〜10××××
イントラリポスPPN・TPN両方約1××××
マルタミンTPN専用添加用×××○(総合)×
ネオラミン・マルチVTPN専用添加用×××○(総合)×
ビタメジンPPN(基本)添加用×××○(B1・B6・B12)×
エレジェクトTPN専用添加用××××
ダイメジンスリーTPN専用添加用××××
アミパレンPPN・TPN両方約3××××
ネオアミユーPPN・TPN両方約2××××

(おまけ)一覧表からわかること

前述している通り、 PPNで投与できるのは浸透圧比が3以下の製剤のみです。

そのほかにも、
・ PPNで投与できるビタミンは水溶性ビタミンしかない
・ PPNで微量元素は投与できない
・脂質は PPN、TPNどちらでも投与できる

PPNは短期間の投与を目的としているため当然ですが、
体内からの排泄が遅い脂溶性ビタミンと微量元素は投与できません。

まとめ

この記事では、静脈栄養の末梢静脈栄養(PPN)と中心静脈栄養(TPN)の違いと、代表的な製剤の比較表を解説しました。

ポイントをまとめます。

  • 輸液によって、末梢静脈、中心静脈で使えるかが異なる
  • 投与できる血管は製剤の浸透圧比で決まる(PPNは浸透圧比3以下)
  • 末梢静脈栄養は限られた栄養しか投与できないため、短期間の栄養管理が目的
  • 中心静脈栄養は十分なエネルギーを投与できるため長期間の栄養管理ができる

静脈栄養は製剤の種類が多く、最初は覚えるのが大変に感じるかもしれません。まずは自分の病院で採用されている製剤から一つずつ確認していきましょう。

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