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【NST薬剤師解説】経腸栄養剤は牛乳・大豆など食品アレルギー禁忌?乳糖不耐症に使用できる?

keiko
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あまり多くは目にしませんが、
見逃すとアナフィラキシーなど命に関わってくる大きな問題になるアレルギー。

アレルギーがある患者さんには慎重に経腸栄養剤も選択したいところ。

・経腸栄養剤は食品アレルギーの患者さんに使用できるのか?

・乳糖不耐症の人には使うことができるのか?

これらの疑問について一緒に考えていきましょう。

本記事では、NST薬剤師の視点で“どの栄養剤が使えるか”を整理していきます。

添付文書でのアレルギー成分の確認方法

医薬品の添付文書には、有効成分やアレルギーの禁忌について記載があります。

牛乳アレルギー、卵アレルギーについては禁忌に記載されているものが多いものの
全てにはっきり書いていないこともあります。

大豆アレルギーについては、禁忌に入っている薬はありません。

ゼラチンアレルギーは、一部禁忌や注意に記載されています。カプセル剤はゼラチンが入っていることがありますが、ほとんどは記載ありません。

全て網羅してはいませんが、以下のように添付文書に記載されています。

牛乳アレルギー

牛乳由来のタンパク質である「カゼイン」が含まれていることが多いです。

その他、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリンなど乳由来成分が含まれているときには注意が必要です。

大豆アレルギー

分離大豆たん白質・大豆レシチン、大豆リン脂質、大豆多糖類、ダイズ油が含まれていることがあります。

ダイズ油については、大塚製薬工場HPに以下の記載があります。

ダイズ油中のアレルゲンに関する詳細な知見は得ておりませんが、大豆由来アレルゲン以外の物質に対してもアレルギー反応が出てくる可能性がありますので、大豆アレルギーのある患者の場合は十分に経過観察を行いながら投与してください。
(大塚製薬工場HPより引用)

ダイズ油は精製された状態であれば、製造過程でほとんどの大豆タンパク質(アレルゲン)が除去されており、アレルギーを引き起こす可能性が低いと考えられます。しかし、本当にアレルゲンが除去されているのかはっきりしていないため、アレルギーの程度によって慎重に使用する必要があると考えられます。

卵アレルギー

卵黄レシチン、卵白由来成分(リゾチームなど)、鶏卵由来成分が含まれていることがあります。

ゼラチンアレルギー

精製ゼラチン、ゼラチン加水分解物など、「ゼラチン」と書いてあります。

※詳しくは分かりませんが、コラーゲンを加熱変性させたものがゼラチンです。コラーゲンでもアレルギーの可能性は否定できませんが、医薬品にはタコシールのみしかコラーゲンは含まれていなさそうです。

経腸栄養剤で食品アレルギーで注意するものは?

牛乳アレルギー

成分栄養剤(エレンタール、へパンED)のみ使用可。

その他は全て牛乳アレルギー禁忌です。

エレンタール、へパンEDは成分栄養剤、つまり窒素源がアミノ酸です。
アレルゲンとなるタンパク質であるカゼインなど乳由来成分は入っていません。

大豆アレルギー

イノラス、アミノレバンは投与できます
イノソリッド半固形は慎重投与。(ダイズ油含有)

他の経腸栄養剤避けた方が良い

どの経腸栄養剤の添付文書にも禁忌とは書かれていません。

イノラス、アミノレバンは大豆由来成分が入っていないので投与できます。

イノソリッド半固形はダイズ油以外の大豆由来成分は入っていません。
前述したように、ダイズ油はアレルギー反応が低いが出現する可能性がゼロとは言えません。

しかし、例えば
ラコールNF(液体)製剤では、「分離大豆たん白質」含有しており、投与できません。
大塚製薬工場HPに書かれています。

同じように考えると、
大豆レシチン、分離大豆タンパク質等が含有している
その他の経腸栄養剤も投与できないと考えられます。

卵アレルギー

医薬品の経腸栄養剤には卵アレルギーには使用できます

卵由来の成分が入っていません。もちろん、禁忌にも書いてありません。

ゼラチンアレルギー

アミノレバンENは避けた方が望ましい

他の経腸栄養剤には入っていない

アミノレバンENには禁忌ではありませんが、ゼラチン加水分解物が入っています。
ゼラチンアレルギーの人には避けた方が良いと考えられます。

その他の医薬品の経腸栄養剤には含まれていません。

乳糖不耐症の人には使用できるのか?

乳糖不耐症とは?牛乳アレルギーとの違い

乳糖不耐症とは、乳糖を分解する酵素(=ラクターゼ)が不足し、乳糖を消化・吸収できない状態です。

牛乳アレルギーと混同されてしまうことがありますが、全くの別ものです。
牛乳を飲んで下痢する人は、牛乳アレルギーではなく、乳糖不耐症です。

乳糖不耐症でも経腸栄養剤は使用できるか?

【結論】

使用できます(重症例には慎重に使用)

※エレンタールは含有量不明のため要注意

大半は乳糖が含まれておらず、乳糖が含まれているイノラス、イノソリッド半固形製剤でも非常に少ない量が含まれています。

よっぽど重症な乳糖不耐症でない限り、使用できると考えられます。

ちなみに、乳糖不耐症であっても牛乳400mL程度は症状なく摂取できるという報告もあります。牛乳中には約5%の乳糖が含まれ、200mLでは乳糖10g相当です。

イノラス:0.57g以下/125mL、0.86g以下/187.5mL
イノソリッド:0.96g以下/袋

このように医薬品の経腸栄養剤には、それよりも非常に少ない量であることがわかります。
※エレンタールは添加物として記載されており、具体的な量が記載ないため要注意です。


注意点!
経腸栄養剤は、消化器症状が発生しやすいです。
そこで、乳糖不耐症だから、少量の乳糖でも下痢になった
と考えるよりも、まずは投与速度の減速や高濃度や浸透圧が高いものを使用していたら低濃度のものを使用する、など別の対策をまずとりましょう。

【おまけ】整腸剤は使用しても良い?

【結論】

使用できます(重症例には慎重投与)

下痢に対して、整腸剤が使用されますが、
乳糖不耐症でも例外ではありません。

しかし、よくよく添付文書を見てみると
医薬品の整腸剤には、乳糖が添加剤として入っています。

乳糖が入っていない整腸剤は、現在販売しているものではこの2種類のみです

  • ビオフェルミン錠
  • ビオフェルミンR錠
  • エンテロノン-R散(販売停止)

では、他の整腸剤は使用できないのか?

【結論】使用できると考えられます。

理由は、薬の中に含まれている乳糖が少ないから。

例えば、ミヤBM細粒、ビオスリーOD錠には乳糖が入っています。
ただ、添付文書を見ても乳糖含有量については書いてありません。
他の整腸剤も同様です。

そしたら本当に少ないか分からないのでは?
用量を考えてみましょう。

ミヤBM細粒の用量は、1日1.5g~3gを3回に分割→1回0.5~1g
→つまり、1回0.5~1g未満
→なんなら、宮入菌末40mg/g入っているから、乳糖は600mg/g=0.6g/g未満になります。

ビオスリー配合錠の用量は、1日3~6錠を3回に分割→1回1~2錠
→添付文書に重量が書いてありまして、200mg/錠です
→つまり、1回200~400mg未満=1回0.2~0.4g未満になります。

前述した経腸栄養剤の中の乳糖含有量を考えたように、
・牛乳400mL程度は症状なく摂取できる。
・牛乳中に約5%の乳糖が含まれ、200mLには乳糖10g相当。

であれば、整腸剤に含まれる乳糖の量は非常に少ないことが分かりますね。

まとめ

今回は、医薬品の経腸栄養剤が食品アレルギー・乳糖不耐症の方に使用できるのか考えてみました。

牛乳アレルギーでは、成分栄養剤以外は使用できず、医薬品の経腸栄養剤から選択することは難しいことがわかりました。

大豆アレルギーは禁忌に載っていないため、添付文書の禁忌欄だけで判断するのは危険ですね。卵は全て入っていないようでした。

ゼラチンは経腸栄養剤に入っているとは思いませんでしたが、まさかのアミノレバンENに入っていました。たまにゼラチンアレルギーの方もいらっしゃるので注意が必要ですね。

乳糖不耐症では、重症例でなければまずは他の原因で下痢がないか確認して、乳糖が入っている栄養剤を使用するときには別の乳糖フリーのものに変更を検討することが良さそうですね。

以下、経腸栄養剤の、食品アレルギー・乳糖含有について表にまとめました。

アレルギーや乳糖不耐症例でも対応できるように、お役に立てる記事になっていれば幸いです。

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