【新人病院薬剤師のレベル上げ5】注射調剤で必ずチェックしたい4つのポイント

keiko

「注射調剤って何をどう確認したらいいのかわからない…」

そんなふうに感じたことはありませんか?
内服の調剤と違って、注射調剤では配合変化や投与経路など、確認すべき項目が一気に増えるため、最初は戸惑うことが多いです。

このシリーズでは、新人薬剤師の「つまずきやすいポイント」をテーマに、現場で役立つ知識をレベル別にまとめています。

第5回目となる今回は「注射調剤で必ずチェックしたい4つのポイント」について解説します。

この記事でわかること

注射調剤の確認ポイント4選
①投与速度 ②投与経路 ③濃度 ④配合変化

これらについて、新人薬剤師がまず押さえたい
注射調剤の基本チェック項目
調べ方

今後役に立つ応用編
よくある問い合わせに、どのようにしたら対応できるようになるか

現場で実際にあったヒヤリ・ハットやエピソードも交えながら、すぐに活かせる内容をお届けします!

 

投与速度|「K見落とすと死ぬ」…速度ミスで命に関わる薬もある

投与速度:スピードが効果にも副作用にも直結

注射薬は「何を入れるか」だけでなく、「どれくらいのスピードで入れるか」も非常に重要です。投与速度を誤ると、薬の効果が強く出すぎたり、副作用が一気に現れたりすることがあります。

この順番でチェックしよう!

➊ 処方箋と添付文書に書かれた速度の単位と合っているか

  ○mL/h、○mEq/h、○分かけて、○時間かけて、○γ(ガンマ)等

 

➋ 添付文書上の速度と相違ないか

 

【応用編】

添付文書上の速度より速いとき、遅いときのダメな理由を調べよう

 

実際にあったこんなこと

新人の頃、先輩から突然こう言われました。
「カリウム、速度見落とすと死ぬからね」
言葉の重みが、今でもずっしり残っています。

また、プレセデックスのフラッシュ投与で徐脈になったという実例も。

ちょっとした確認ミスで、
「事故につながる」「患者さんに苦しい思いをさせる」
そんなリスクがあるのが投与速度です。

特に注意したい薬の例

  • 電解質(カリウム、マグネシウムなど)
  • 抗菌薬(バンコマイシン、アジスロマイシンなど)
  • 鎮静薬(プレセデックス など)

迷ったときの調べ方

  • 添付文書の「用法・用量」の速度や投与時間について記載があるかみる
  • 添付文書の「過量投与」「薬剤投与時の注意」に、急速投与について記載があるかみる

 

薬剤部へのよくある問い合わせ例

添付文書の投与速度とは異なる処方があり、疑義照会する場面で・・・
「○分で投与する薬って知ってるけど、ゆっくり投与する分には問題ないでしょ?」

すんなり添付文書上の投与速度に変更してくれたら良いけど、疑義照会で質問されることも多いです。この速度ではないとダメ。という理由を知っておくと、これらの問い合わせにも対応できるようになります◎

投与経路|「皮下?静注?」その選択、大丈夫?

投与経路:基本「静注」だからと油断しない

静注と書いてある=どこからでもOKではありません。薬によっては、皮下のみOK、筋肉のみOKのような薬もあります。この適応なら、この投与量なら、静注、皮下注と吸収速度や持続時間から設定されている薬もあります。投与経路を間違えると、効果が出ない・副作用が出ることも。

この順番でチェックしよう!

➊処方箋と添付文書に書かれた投与経路が一致しているか

➋添付文書に複数の投与経路が書いてあるときは、用法用量と合わせて投与経路が正しいか

 

【応用編】

静注以外に投与経路が限定されている薬の理由を調べる

 

実際にあったこんなこと

「この薬、皮下注射の指示だったけど静注しちゃった…」
「中心静脈から投与する予定だったのに、間違えて末梢から投与しちゃった…」

という看護師さんの報告。

それが過量投与、過少投与、静脈炎につながったケースもありました。
“なんとなく静注”に慣れると、事故る。

正しい処方でも投与するときに間違えてしまうことがあるので、新人のうちは処方箋の内容は間違えなくあっているように!ということを意識しました。

迷ったときの調べ方

  • 添付文書の「用法・用量」の投与経路をみる
  • 添付文書の「適用上の注意」に“静脈内に投与しないこと”と書いてある
  • 添付文書に書いてない投与経路であれば、インターネットで調べて先輩に確かめる

例えば、オクトレオチド皮下注は薬品名からも分かるよう、皮下注用の薬です。
しかし皮下注が難しく、経験的に持続静脈注射をしていることもあります。

薬剤部へのよくある問い合わせ例

投与経路については事後報告が多いです。
「インシデント起きた後にどうしよう?」と病棟看護師から聞かれます。

皮下注射用である理由を知っていれば、静注してしまったときに、過量投与だから○○の副作用をチェックするように。と情報提供できたり、過少投与だから効果が出ない可能性がある等、対応ができるようになります◎

濃度|いつもと同じに見えて…実は「薄め方」が違うことも!

濃度|よくみる「100mL希釈」でも薬によってはNGなことも

薬の濃度は「ただ希釈すればいい」という話ではなく、投与ルートや持続投与かどうか、薬の特性によってベストな濃度が変わるのです。

例えば、抗菌薬はだいたいの薬が「生食100mLで希釈」して投与できます。しかし薬によっては濃度が指定されている薬があります。むしろ希釈しないで投与した方が良い薬もあります。

これをチェックしよう!

➊濃度が指定されている薬ではないか

➋処方箋に書かれた濃度と指定の濃度が正しいか

【応用編】

濃度が指定されている薬の理由を調べ、許容範囲を知ろう

実際にあったこんなこと

1年目の頃、ジスロマックが他の抗菌薬と同じように糖液100mLで処方されていました。
カルテを見ると投与2日目の処方でした。

「これ…溶解量違う?昨日も投与してるみたいだし、これでいいのか?」
たまたま「溶解液に注目する日」と自分で決めていたおかげで気づいて先輩に質問し、先輩に医師へ報告してもらい、その後のインシデントを防げた経験があります。

濃度に注意が必要な例

抗菌薬(ジスロマック、バンコマイシン等)

抗がん剤(エルプラット、アバスチン等)

 

迷ったときの調べ方

添付文書の「用法用量」に書いていない

  • 添付文書の「適用上の注意」→「薬剤調製時の注意」をみる
  • 薬の元箱、薬本体に書いてあることがある

 

薬剤部へのよくある問い合わせ例

添付文書の濃度とは異なる処方があり、疑義照会する場面で・・・
「ちょっと水を減らして投与したかったんだ。」

医師からこのような返答がくることがあります。

絶対ダメな薬であれば、その理由、デメリットを。許容範囲がある薬であれば、ここまでだったら大丈夫ですよ。と情報提供できるようになります。

配合変化|“混ぜてOK”は本当にOK?迷ったら確認すべきポイント

配合変化:混ぜてはいけない薬を見抜く

同じレシピ内に複数の注射薬が一緒に記載されているとき、それらを混ぜて投与してよいかどうか、つまり「配合変化」を確認するのは薬剤師の大事な仕事のひとつです。
薬同士を混ぜると見た目は変わらなくても、成分が分解されたり、結晶ができたり、効果がなくなったりすることがあります。

この順番でチェックしよう!

溶解液が正しいか
同じレシピ内の薬、どちらからも配合変化がないか

【応用編】

違うレシピの薬を、同じ末梢ルートから投与できるのか調べよう

実際にあったこんなこと

あるとき「A薬はB薬に混ぜて大丈夫」と思って確認したら、逆側(B薬がA薬に混ぜて良いか)を調べると「不可」と書かれていたことがありました。
どちらの薬を基準に調べたかによって結果が違うことがあるんです。配合変化は一方向でOKでも、逆方向ではNGなことも。

チェックするときは、両方の薬の特性を確認するクセをつけましょう。

迷ったときの調べ方

  • 注射薬調剤監査マニュアルなどの配合変化表を活用
  • 書籍がなければ、添付文書の「配合変化」を検索
  • メーカーのホームページに「配合変化表」が掲載されているときもある

薬剤部へのよくある問い合わせ例

「A薬とB薬、同じルートから投与しても良い?」
病棟業務をやっているときや、薬剤部への問い合わせの中で多い質問の一つです。
処方上の配合変化の確認に慣れておくと、今後このような問い合わせを受けたときに対応できるようになります◎

 

【まとめ】

注射調剤では、確認すべき項目が多くて最初は戸惑うもの。でも、ポイントを押さえれば、「なんとなく調剤OK」が「根拠を持って確認した」に変わります。

最後に、注射調剤で必ずチェックしたい4つのポイントを振り返っておきましょう。

注射調剤 4つの確認ポイント

  1. 投与速度
     → 指示された速度で大丈夫?速すぎ・遅すぎない?
  2. 投与経路
     → 静注・皮下・筋注…適切なルートになってる?
  3. 濃度
     → その薄め方、合ってる?希釈は薬によって違う!
  4. 配合変化
     → 薬同士を混ぜていい?両方の薬から確認しよう

今できなくても大丈夫。調べられたらOK!

最初から全部覚えている必要はありません。
調べる力と、調べようとする視点を持つことが、薬剤師としての最初の一歩です。

普段の注射調剤で、今回お伝えしたポイントを押さえて調べる習慣がつけば、少しずつ身についていきます。焦らず、一つずつできるようになっていきましょう。

次第に、病棟での問い合わせや、インシデントへの対応もできるようになってきますよ。

 

次は、薬剤師レベル6「医薬品管理」についてご紹介していきます!

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