ラコールNF半固形とハイネックスゼリーの違い NST薬剤師が教える半固形製剤の違い

病院薬剤師のkeikoです。2024年にNST専門療法士の試験に合格した経験を生かし、情報発信しています。今回は、臨床で役に立つであろう、具体的な製剤比較をしています。
大塚製薬から販売されている半固形製剤のラコールNF半固形(医薬品)とハイネックスゼリー(食品)の比較です。
なぜ医薬品と食品のこの2つを比較するのか、というと
(大人の理由で)病院で働いていると入院中は食品、退院後は医薬品に変更することがあります。
入院中はハイネックスゼリー、退院後はハイネックスゼリーに似ているラコールNF半固形と変更になるケースをよく見ます。似ている製品だから今ハイネックスゼリー1日900kcal 投与中ね!じゃあ、ラコールNF半固形900kcal分、つまり1日3袋退院処方で出してもらったら良いね!とNST薬剤師として雑な回答をしていました。
ふと、”あれ・・・?本当に同じなのか?医薬品か食品の違いだけなのか・・・?”
と疑問に浮かび、どこが似ていて、どこが違うのか知らない・・・
ということで調べてみました。
すると、結構違いがあったのでご紹介しますね。
ただ結論、医薬品で半固形製剤がラコールNF半固形しか採用品がない場合には同じカロリー変換で問題ないと思われます。
同じところ(ほとんど同じところ)
ラコールNF半固形 | ハイネックスゼリー | |
1袋あたりの量 | 300g | 300g |
1袋あたりのエネルギー量 | 300kcal | 300kcal |
濃度 | 1kcal/g | 1kcal/g |
形状 | 半固形 | 半固形 |
1袋あたりの水分量 | 228mL(76%) | 228mL(76%) |
1袋あたりのタンパク質量 | 13.14g | 13.5g |
保管方法 | 室温 | 常温保存可、なるべく冷所 |
牛乳・大豆アレルギー | 使用しない | 使用しない |
このように、栄養投与量に関しては1袋あたりのエネルギー量、タンパク質量、水分の投与量が同じく変更しやすいですね。半固形製剤は元々下痢の改善も期待されていますが、濃度も1kcal/gと同じため変更にあたって下痢の可能性も低いと考えられます。
違うところ
ラコールNF半固形 | ハイネックスゼリー | |
医薬品 or 食品 | 医薬品 薬価:324円/個 (2024年収載) | 食品(濃厚流動食品) 値段:356円/個(税込) |
タンパク質:脂質:糖質比 (P:F:C比) | 18:20:62 | 18:25:57 |
NPC/N比 | 188 | 159 |
投与経路 | 経腸のみ | 経腸、経口 |
食物線維 | 栄養成分として含有なし (1.5g/袋;増粘剤としてアルギン酸、カンテン末含有) | 3g (イヌリン) |
処方設計熱量 | 1600kcal/日 | 900kcal/日 |
乳糖 | 入っていない | 不明 |
ゼラチン | 入っていない | 不明 |
この中で大きく異なるのは
①医薬品か食品か
②処方設計熱量
①医薬品か食品か
医薬品は処方が必要ですが、薬価収載されているため保険で1~3割負担になります。
食品は処方がなくても購入できるところが医薬品との大きな違いですね。ネットで調べて購入できるので、好きなタイミングで購入できます。販売店によっては価格が異なることがあります。
医療従事者にとっては在宅の保険算定にも関わってくる場合があります。
②処方設計熱量
処方設計熱量ってなに?と思う方もいらっしゃるかと思いますが、
1日にそのカロリー分投与することを想定してつくられたものということ。
つまり、
そのカロリー投与しないと1日に必要なビタミン、微量元素を補えない
ということです。
ラコールNF半固形では1600kcal、1日5~6袋投与しないと必要なビタミンや微量元素を満たすことができません。ハイネックスゼリーはなんと3袋で必要なビタミンや微量元素を補うことができます。(1500kcal(=5袋)投与しても耐用上限量は超えない設計になっています)
年齢が若くエネルギー消費量が高い方にはラコールNF半固形でも問題なさそうですが、
ご高齢者で維持エネルギー量が低い方にはハイネックスゼリーの方がビタミン、微量元素を補う点ではよさそうですね。
ちなみに、処方設計熱量を低くした医薬品、”イノソリッド配合経腸用半固形剤”が1月販売されました!それについてもまた比較していこうと思います。